業務用3Dプリンタの中でも注目のformlabs form3!性能から注意点まで徹底解説
2023/08/31
3Dプリンターは、個人で趣味として楽しむ範囲を超え、業務用にも使われるようになりました。多様なサイズ、材料、造形方式がある中で何を選べばよいのでしょうか?
用途によって異なるため、目的に応じた3Dプリンター選びが必要です。
3Dプリンターの登場当時から比較しても、技術は大幅に進歩し、より繊細な造形が可能になりました。2011年に販売されて以降、国内外問わず人気となり、Form1の後継機であるデスクトップ型3DプリンターのForm3は、独自の技術を組み合わせることで、これまで以上の精度の造形を可能にしました。
form3を生み出したformlabs社とは?
業務用3Dプリンターの中でも、造形の細かさから人気を博している「form3」。
まずは、form3を生み出したformlabs社について紹介します。
formlabs社について
Formlabs社は、MITメディアラボの学生3名が2011年に立ち上げた3Dプリンターのメーカーで、デスクトップタイプのSLA 3Dプリンター開発のパイオニアです。
Form3が開発される前身として、Form2、Form1モデルが販売されていました。
2013年の5月に販売されたform1は、クラウドファンディングにて295万ドルの資金を集めて成功、アメリカをはじめとした全世界へ出荷されました。
Form2は、Form1の改良版として開発。材料の自動補充や精度、造形サイズの向上により安定したプリントが可能になったモデルです。
2015年9月に販売され、全世界5万台の導入実績を誇る大ヒットをしました。
世界最大とされる3Dプリンターメーカーの記録を抜く数量です。
2019年に、待望のForm3とForm3Lを販売。光造形3Dプリンターとして、新たにLFSテクノロジーという新しい技術を搭載しており、Form2以上の高繊細な造形を実現しました。
現在は、デスクトップタイプの3Dプリンターだけでなく、デジタル工場への第一歩として期待されるFormcellなども開発されています。
formlabs form3の特徴とは
全世界から注目されている3Dプリンターメーカー「Formlabs」社が販売したForm3の特徴を紹介します。
※2022年1月よりForm3は、Form3+にアップグレードされました。機能の向上がメインであるため、Form3の特徴を紹介しています。
光造形方式
Form3の造形方式は、光造形方式が採用されています。熱溶解積層(FDM)方式と同じくらいメジャーな造形方式です。
レジンと呼ばれる液体のUV硬化性樹脂に紫外線を当て、硬化させて造形します。
FDM方式と比べ、積層跡が残りづらいため、出来上がりの質感が向上します。
光造形方式は更に、レーザーがベースのSLA方式とDLP方式の2つに主に分けられます。
・SLA方式:タンクに置いたプラットフォームを下から紫外線で照射。平面をレーザーで走査しながら材料を硬化させていきます。造形に時間はかかりますが、より細かく滑らかに造形できます。細かさを求める部品、高解像度で造形したい場合に使用。
・DLP方式:タンクに置いたプラットフォームに紫外線を照射し硬化させます。SLA方式と異なり、平面で紫外線を照射します。一度に広い範囲を硬化できるため、造形速度はSLA方式よりも優れています。
あまり細かさを求めない部品、とても複雑で小さいパーツをひとつだけ造形したい場合に適しています。
Form3に搭載された独自技術
Form3は、従来の光造形(SLA)方式を見直したLFS方式を採用、それに加え、Formlabs社独自の「Low Force Stereolithography(LFS)™」技術を搭載しています。
この技術は、光造形方式への新しいアプローチです。レーザーとミラーを含む一つのユニットであるLight Processing Unit(LPU)を使用することで、繊細な造形と造形速度を両立しながら、レジンを硬化させます。Form2から更に滑らかで透明感ある造形とサポート材の容易な取り外しが可能となりました。
メンテナンス性、センサー類の強化
LPUの搭載で、メンテナンス性も向上しました。レジンの硬化に用いるレーザーは全てユニット単位でまとめられているため、ユニットの交換のみでメンテナンスが完了します。
また、Form3には多数のセンサーが搭載されています。これにより異常の検知はもちろんのこと、温度管理機能も向上します。光造形方式の造形精度は、レジンの温度に大きく依存するため、より最適な管理ができるようになりました。
さらに詳しく!form3の優れている点を紹介
Form3に新しく搭載された技術によって、以前までの3Dプリンターでは考えられないレベルで精度の向上がなされました。
Form3が優れている点を、他の造形方式との比較をしながら確認していきます。
LFS技術とは
LFS技術とは、Formlabs社がForm3開発時に搭載した技術です。
従来のSLA方式では、レーザーによって硬化したレジンを上に引っ張りあげ、余ったレジンを落とすと同時に、底面から剝がしていました。
従来は、造形時に、この引き剝がす工程に耐えるため、サポート材をより強固に、造形物の積層も押し付けて製造する必要がありました。
新技術では、底面にフィルムを使用。レーザー照射時の移動と同時に造形物が底面から自然と剝がれるような処理が施されています。
これにより強固な造形が不要になったForm3では、サポート剤を取り外しやすくなり、積層の密度が減るため、透明な樹脂を使用した際の透明度が向上しました。
豊富なレジンを使用可能
Form3では、多様なレジンを使用可能です。
混ぜることはできないため、レジンの入れ替え時には清掃が必要ですが、透明な仕上がりが期待できるクリアレジンや、耐久性を強化したタフレジン、ゴムの性質を持っているフレキシブルレジンなどに対応しています。
運用に関する注意点
3Dプリンターは使用する環境にも注意が必要です。基本的に温度や湿度などが材料の物性に影響するため、常に一定の環境化で使用する必要があります。
Form3 (光造形法)を使用する環境
光造形方式の使用時には、周囲の環境に2点注意をしなければいけません。
・液体樹脂は、高温下で膨張する可能性があります。そのため、室温は25℃程度を保ち、湿度も一定に保つことが必要です。
・紫外線で硬化する性質を持っているため、太陽光などで固まる可能性があります。レジンの保管時は、遮蔽して紫外線が入らないように注意が必要です。
プリント後の処理
光造形方式では、材料に液体状のレジンを使用するため、造形物についた余分な樹脂を洗浄し除去する必要があります。
専用の仕上げキットまたは別売りの自動洗浄機「Form Wash」を使用、市販の濃度90%以上のイソプロピルアルコール(IPA)を使って造形物を洗浄しましょう。その後、サポート材を取り外すことで完成します。
また、材料にエンジニアリング用レジンやキャスタブルレジンなどを使用した際には、「Form Cure」などを使用して二次硬化が必要となることもあります。
定期メンテナンス
3Dプリンターも機械であるため、定期的なメンテナンスは必要です。
Form3は、豊富な種類のレジンを使用できますが、混ざってはいけないため、1種類のレジンごとにレジンタンクを使い分けてください。
もしくは、レジンタンクを丁寧に洗浄する必要があります。
また、使用する材料を変更する際には、IPAなどでプラットフォームを綺麗に洗浄し、使用していた材料が残らないようにしましょう。
なお、レジンタンクはレーザービームの照射により次第に摩耗していきますので、定期的に交換が必要です。
Form3は、光造形方式を採用した3Dプリンターですが、他社3Dプリンターとの差別化で独自技術を搭載しています。LFS技術、LPUの使用で造形物の滑らかさを改善しつつメンテナンス性も向上されました。また、高性能なセンサを多数搭載し、最適な温度管理が可能です。
光造形方式は、紫外線で硬化する性質を持つレジンを材料に使用します。
レジンは、熱や紫外線に弱く、造形時は、適切な温度管理や周囲環境が重要です。管理を怠ると、造形品の品質に直結するため、注意しなければいけません。
3Dプリンターは、その用途に応じて、造形方式や材料を変える必要があります。Form3は光造形方式であるため、造形は繊細である反面、日光などに弱いです。機能だけで考えず、用途に合った3Dプリンターを見極めましょう。