3Dプリンターについて

大量生産実現に向けて！自動化機能搭載の業務用3Dプリンターの魅力

2024/03/27

製造業における大量生産の実現に向け、自動化機能を搭載した業務用3Dプリンターが注目されています。これらのプリンターは、製造工程の効率化や生産性向上を可能にし、従来の製造方法では難しかった柔軟性や迅速性を提供します。

製造業での活用が広まる業務用3Dプリンター

製造業において、業務用3Dプリンターは特殊な形状や設計を持つ部品を少数生産する場合に幅広く活用されています。具体的な活用シーンとしては、以下が挙げられます。

・航空機部品
・自動車のプロトタイプやカスタムパーツ
・医療機器のモデルやカスタマイズされた義肢
・建築模型やプロトタイプ

業務用3Dプリンターは、デジタルデータから直接物体を造形するため、金型やツールの製作工程が不要です。そのため、小ロット生産やカスタマイズされた製品の製造が容易になり、従来の生産方法では実現困難だった柔軟性や迅速性が得られるようになりました。

特に、製品の設計変更や改良が頻繁に行われる場合や、個々の顧客のニーズに合わせた製品を提供する必要がある場合に3Dプリンターは大きな利点を発揮します。

このような利点から、ますます多くの企業が3Dプリンターを導入し、今後も3Dプリンターは製造業における重要なツールとして市場の拡大が続くことが予想されます。

業務用3Dプリンターは大量生産に向かない？

業務用3Dプリンターは革新的な技術でありながらも、大量生産には適していないとされています。その理由と、業務用3Dプリンターの一般的な工程について解説します。

◇大量生産には不向きとされる業務用3Dプリンター

業務用3Dプリンターは、部品をひとつずつ層状に積み重ねて造形するため、従来の製造方法に比べて製造速度が遅く、大量生産には向いていません。また、3Dプリンターで使用される材料のコストが比較的高い点や、仕上げの工程が手作業になる点なども大量生産を阻む要因とされています。

◇業務用3Dプリンターの一般的な工程

業務用3Dプリンターの一般的な工程は以下のとおりです。

・3Dデータの作成
CADソフトウェアや3Dスキャナーを使用して、対象物の3Dデータを作成します。

・STLデータへの変換
3DデータをSTL形式（立体造形用データ形式）に変換します。

・造形プログラム作成
STLデータを元に、3Dプリンターが部品を造形するための動作プログラムを作成します。このプログラムには、部品の層ごとの造形情報や移動経路などが含まれます。

・造形
3DプリンターにSTLデータから生成された造形プログラムを読み込ませ、部品の造形を開始します。

・サポート材の除去
造形が完了した後、必要に応じてサポート材を除去します。サポート材は、造形過程で部品を固定するために使用される材料であり、造形後に取り除くことで部品の表面や内部を整えます。

業務用3Dプリンターの自動化機能

画像出典先：MONOist

業務用3Dプリンターの大量生産における課題を克服するために、自動化機能が急速に進化しています。以下では、業務用3Dプリンターの自動化機能について詳しく説明します。

◇大量生産を阻む課題の一部を自動化機能で解決

3Dプリンティング技術は、試作品やモデルから最終製品まで幅広く活用されています。しかし、手触りや外観が重要な製品では、3Dプリントによる表面のざらつきを処理し、仕上げを行う必要があります。この仕上げ工程は手作業で行われるため、コストがかさみ、大量生産に向いていませんでした。

AMT社が開発した「PostPro」は、独自の化学蒸気平滑技術を活用し、3Dプリント製品の仕上げ工程を完全自動化します。これにより、人手を必要としない仕上げ作業によって大量生産が可能になり、製品の見た目や手触りの品質が向上します。PostProによって表面処理を施したパーツは、ざらつきがなくなるだけでなく、防水性や気密性、塗装性、機械特性も向上します。この自動化技術の導入により、3Dプリンターを使用した最終部品の製造におけるコスト、品質、安全性、利便性の面で大きな改善が期待されています。

さらに、Rivelin Robotics社も金属3Dプリンティングにおける後処理工程を自動化する装置を開発しました。この装置は、AIなどの制御ソフトウェアを活用し、さまざまな形状の造形品のサポートを自動的に除去します。この自動化によって、作業者による品質のばらつきを減らし、後処理工程のコストを従来の1割にまで下げることが可能になります。これにより、金属3Dプリンティングの本格導入において、自動化が不可欠であることが示されました。

◇仕上げ工程を自動化

仕上げ工程の自動化は、業務用3Dプリンターの技術革新の一環として重要な進化です。この技術革新により、業務用3Dプリンターによる大量生産が可能となりました。

表面処理機能

表面処理機能は、部品の表面を滑らかにするための研磨・研削、特定の塗装やコーティング、部品の硬化などを行う機能です。この機能によって部品の仕上げ工程が自動化され、人間の手作業に比べてより高速かつ一貫性のある処理が可能となります。

サポート材の自動除去機能

従来は、サポート材の除去は手作業で行われていましたが、最近では自動除去機能が搭載された3Dプリンターが登場しています。サポート材の自動除去機能は、部品を自動的にスキャンしてサポート材を適切に取り除く機能です。これにより部品の後処理工程を効率化し、生産性を向上できます。

自動化機能を搭載した業務用3Dプリンターの導入事例

自動化機能を搭載した新型業務用3Dプリンターとして、近年「Form Auto」が注目を集めています。「Form Auto」の特徴や導入事例を見ていきましょう。

◇24時間稼働可能なForm Auto

Formlabsは2023年1月31日、光造形3Dプリントの自動化装置「Form Auto」の国内向け出荷を同年4月中旬に開始すると発表しました。この装置は、光造形3Dプリントを自動化し、プリントした造形物を数秒で取り外す特許技術「クイックリリーステクノロジー」を活用しています。

形態が異なる「Form 3」「Form 3＋」「Form 3B」「Form 3B＋」の4機種に対応し、プリントが完了した後、造形物を自動的に取り外して専用のUVシールド容器に保管します。このUVシールド容器内のバスケットは、そのまま大型後処理機「Form Wash L」に投入できる仕組みです。

また、リモート対応が可能で、夜間や休日に人員を配置する必要がなく、最大80％の人員を省力化できます。これにより、プリンターを常時稼働させることが可能になります。

◇Form Auto導入事例

B社のForm Auto導入前の大きな課題として挙げられたのが、人的負荷の増加です。大量の機器の確認作業、フォームの処理などの業務には多くの時間と労力が必要であり、さらにヒューマンエラーのリスクも潜んでいました。

BB社はForm Autoの導入により、上述した人力による反復作業が自動化され、業務効率が大幅に向上し、ヒューマンエラーが低減されました。B社の担当者によると、「Form Auto1台で、プリンター5台分の作業が可能」と述べています。

業務用3Dプリンターは、製造業において特殊な形状や設計を持つ部品の少数生産に幅広く活用されています。主な活用シーンは航空機部品や自動車のプロトタイプ、医療機器、建築模型などです。3Dプリンターはデジタルデータから直接物体を造形するため、金型やツールの製作工程が不要で、小ロット生産やカスタマイズされた製品の製造が容易になりました。

しかし、従来の製造方法と比較して製造速度が遅く、材料コストが高い点や仕上げの手作業などの課題があり、大量生産には向いていませんでした。そこで、自動化機能が進化し、後処理工程や表面処理を自動化する技術が登場しました。

AMT社の「PostPro」やRivelin Robotics社の装置などがその代表例です。これにより、業務用3Dプリンターを使用した大量生産が可能になり、製造業における効率性や柔軟性が向上しました。Form Autoなどの自動化機能を搭載した新型3Dプリンターの導入事例も増えており、24時間稼働可能な機能や作業効率の向上が報告されています。