業務用3Dプリンターの価格は何で変わる?ポイントと選び方
2023/09/22
3Dプリンターを業務用に導入する際、予算と機能のバランスを考え、何がベストなのか悩むことでしょう。
3Dプリンターの技術進歩はめざましく、今では様々な機能をもつプリンターも登場してきました。付帯する機能や性能に合わせるように、プリンターの価格もあがっています。求める機能、品質、使える材料の違いによって、3Dプリンターの価格は大きく変動してきます。
業務用3Dプリンターの価格が変わるポイント
ひとくちに業務用プリンターといっても、価格によってその性能は大きく変わります。
目的に応じた使い方ができれば、安いのが悪い、というわけではありません。
価格に影響するポイントと理由を合わせて理解し、妥当な相場を考えていきましょう。
価格に影響するポイント:安定性
3Dプリンターにおける安定性は、造形ミスをいかになくせるか、という点で非常に重要な要素です。業務用で使用する場合、主にサンプルの試作や量産品にプリンターが使われますが、どちらにおいても「造形ミス」は完全な無駄になります。
安価な3Dプリンターは、うまく印刷を完了するための調整に時間がかかります。
限られたスケジュール、費用で開発する必要があるため、プリントにおける試行錯誤
は不要な時間です。
機能・素材の種類などが増えても、造形に安定性がある機種は今でも多くありません。
そのため、安定性の高いプリンターは比較的高い価格帯で販売されます。
価格に影響するポイント:造形方式・精度
3Dプリンターの造形方式も、価格を決定づける要素です。
造形方式は多岐にわたりますが、代表的な例をあげると以下の4つがあります。
・熱溶解積層方式
・光造形方式
・レーザー焼結方式
・インクジェット方式
3Dプリンターの造形手順は、材料を約0.数mmの厚みのある層で積層していき、立体的な造形を可能としています。
この厚みのことを「積層ピッチ」といい、積層のピッチが小さいほど、造形物をリアルに表現できますが、高い精度が求められ、高価になります。
例えば、熱溶解積層方式は、温めて溶かしたABS樹脂を積層して造形する方式です。
2009年に特許期限が切れたため、多くの3Dプリンターがこの方式を採用しており、安価なプリンターも製造されるようになりました。
樹脂は冷えると収縮する性質を持つので、温度管理を誤ると、造形物が反り返ってしまいます。
熱溶解積層方式の3Dプリンターは、安価で利用しやすい反面、温度管理が大変で積層ピッチも大きい場合が多いです。
価格に影響するポイント:造形サイズ
3Dプリンターでできる造形物のサイズは、3Dプリンターの箱内でノズルやレーザーが動けるエリア以内のサイズです。
そのため、大きい造形物を作る場合、それに合わせたサイズの3Dプリンターが必要であり、プリンターの本体サイズが大きいほど、価格も比例して値上がりします。
◇価格に影響するポイント:使用可能な材料の幅
様々な種類の材料を使用できるかどうかも、価格に影響するポイントです。
業務用プリンターの価格帯ごとの違い
3Dプリンターの価格には、「造形の安定性・方式・精度・サイズ・材料の幅」などの多くの要素が影響してきます。
そのため、業務用プリンターの価格は、数十万円~数千万円まで幅広いです。
導入のコスト感を把握できるよう、それぞれの価格帯のプリンターに期待できる特徴をまとめて紹介します。
数十万~100万円以下
この価格帯は、ほとんどが卓上サイズの3Dプリンターです。
用途としては、デザインの検討段階の試作に使われることが多いです。
材料の幅も少ない、精度や耐久性は弱く、印刷時間も長い傾向にあります。
一方で、初心者にも扱いやすい設定がされている場合が多く、オフィス等に設置が可能なサイズのため、気軽に利用できるメリットもあります。
100万~500万円以下
この価格帯は、卓上サイズ~冷蔵庫サイズの3Dプリンターが存在しています。
業務用プリンターのミドルレンジ帯とされており、用途としては、開発初期段階の試作に使われることが多いです。使用する材料の幅も増え、精度もあがるため、耐久性や大まかな機構の動作確認には適している価格帯です。
また、印刷時間も早くなるため、業務効率の改善にも役立つでしょう。
製品によりますが、オフィスに設置可能なサイズがほとんどです。
500万円以上
この価格帯は、ハイスペック機として考えられ、価格に影響するポイントに対してどこまで対応するかで価格が変動してきます。
ただし、基本的には小ロットの量産に耐えられるレベルの精度・安定性を有している場合がほとんどで、造形物の見た目も明らかにきれいにできます。
3Dプリンター導入の目的に合う強みを持つプリンターを選びましょう。
業務用3Dプリンターの選び方
造形方式、機能や使える材料によって価格帯が千差万別の3Dプリンターですが、同価格帯で似たような機能の場合には、何を基準にすればよいか迷います。
業務用3Dプリンターを選ぶ際のポイントを紹介します。
プリンターの用途と造形方式で考える
3Dプリンターを選ぶ際に用途とそれに合った造形方式は重要です。
例えば、製品の構造を確認する目的であれば、表面の仕上がりが若干荒くても、材料の取り扱いが容易で、導入コストも低いため、熱溶解積層方式の3Dプリンターがおすすめです。
複雑な形状のサンプルや、仕上がりのきれいなサンプルを作成する際は、光造形方式やインクジェット方式が適しています。熱による変形が少なく、積層ピッチも細かいため、デザインを重視する場合には適しています。
積層ピッチの細かさだけで精度を判断しない
3Dプリンターの精度を評価する際には、「積層ピッチ」という指標でよく判断されますが、それだけで精度を決めるのはやめておきましょう。
実際のところ、以下の観点で精度を考えることが必要です。
・寸法精度:設計した3Dデータの寸法と実際に造形した寸法の差です。
・表面精度:バリや積層痕が目立たないかどうかの指標。
・積層ピッチ:細かいほど積層痕が目立ちにくく、精細な造形が可能ですが、X-Y方向の精度も同時に求められます。
造形サイズで選ぶ
製造できる造形サイズも注意しましょう。
試作品が大きい場合、材料の温度差も大きくなるため、温度差による歪みや反りが発生しやすくなります。製造する試作品に適したサイズのものを選ぶようにしましょう。
また、3Dプリンター自体で印刷できるサイズが、試作品が作れるサイズであることもチェックしておくポイントです。
カタログスペック以外にも注目
カタログのスペックだけではなく、他の要素も考慮することが大切です。
サポート材の取りやすさ、使用できる材料の種類、造形速度などは、精度以外で求められる意外に気がつかない部分です。他に、導入後のメンテナンスやサポート体制にも目を向けましょう。3Dプリンターの故障、トラブル対応が長引くと、業務にも影響がありますよね。迅速に対応できるメーカーという点で選ぶのもよいでしょう。
実際に無料のサンプルを依頼するなどして、機器の性能や機能を確認することも、より目的にあったプリンターの選定をするためにおすすめします。
3Dプリンターの価格には、様々な要素が交わっています。
主要な特許技術の解放により技術進歩が進んだ結果、多様な選択肢が登場しました。
魅力的な機能が多く、機器選びに悩んでしまうどころですが、業務用に3Dプリンターを導入する場合に重要な点は、どんな目的で利用するかという点です。
試作用か量産用かで求める精度や品質、価格も変わっていきます。
目的から考え、適した価格帯の3Dプリンターを選ぶようにしましょう。