金属材料の造形可能な業務用3Dプリンターを提供するメーカーと金属3Dプリンターの基礎知識
2023/11/28
金属3Dプリンターは、レーザーや電子ビームなどのエネルギー源を用いて溶融・固化させながら、立体物を造形する製造技術です。金属3Dプリンターにはメリットがある一方でデメリットもあります。ここからは、金属3Dプリンターのメリット・デメリットを詳しく把握しておくことが大切です。
金属3Dプリンターとは?使用可能な金属材料
金属3Dプリンターの基本的な特徴や、金属3Dプリンターで使用できる材料について見ていきます。
金属3Dプリンターとは
金属3Dプリンターは、従来の造形技術とは異なり、粉末状の金属材料を層状に積み重ね、レーザーや電子ビームなどのエネルギー源を用いて溶融・固化させながら、立体物を造形する製造技術です。金属3Dプリンターを使用することで、複雑な形状や内部構造を持つ金属部品を効率的に製造できます。
金属3Dプリンターにはさまざまな製造方式があり、主なものは以下の4つです。
パウダーベッド方式
レーザーや電子ビームなどのエネルギー源を使用して、金属粉末を薄い層に敷き詰めたベッド上で溶融・固化させる方式です。精密な部品を製造するのに適しており、内部構造が複雑なものも造形できます。
指向性エネルギー堆積方式
金属粉末を使用し、エネルギー源(レーザーや電子ビーム)を直接的に溶融・積層する方式です。高い精度と速度で製造が可能であり、航空宇宙や自動車産業で採用が進んでいます。
熱溶解積層方式
金属線材を加熱して溶融させ、積層していく方式です。簡便でコスト効果が高いのが特徴で、大型部品や構造物の製造に向いています。
バインダージェット方式
金属粉末にバインダーを噴射して層を形成し、その後エネルギー源で固める方式です。バインダーの使用によりサポート構造を容易に形成でき、複雑な構造の部品も製造できます。
使用可能な金属材料
金属3Dプリンターで使用可能な金属材料としては、主に以下が挙げられます。
ステンレス
一般的な金属3Dプリンティング材料として、頻繁に用いられるのがステンレスです。耐食性と強靭な特性を持つため、さまざまな業種で重宝されています。
チタン
チタンは軽量かつ高い強度が特性です。特に人工関節や歯科インプラントなどの医療機器において、重要な役割を果たしています。
アルミニウム
軽量かつ優れた導電性を持ち、電子部品や自動車部品などに使用されます。
鋼
鋼の大きな特性は、その高い硬度と耐摩耗性です。この特性により、工具や金型など高い耐久性が求められる用途に適しています。
金属3Dプリンターのメリット・デメリット
金属3Dプリンターにはメリットがある一方でデメリットもあります。ここからは、金属3Dプリンターのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
金属3Dプリンターのメリット
主なメリットは以下の3つです。
造形形状の自由度が高い
金属3Dプリンターは、部品を層状に積み重ねていく方式を採用しているため、従来の方式よりも複雑な形状や内部構造を造形できる点がメリットです。立体的で細かいディテールや複雑な幾何学的形状も、一層ずつ積み上げることで効率的に製造できます。
試作品や小ロット品を手軽に造形できる
金属3Dプリンターは、一部品ずつ層状に積み重ねていくため、金型や治具などをあらかじめ用意する必要がありません。スムーズな製造が可能であり、試作品や小規模なロットの生産に非常に適しています。
製造コストを削減できる
製造コストを削減できる点も大きなメリットです。金属3Dプリンティングでは、金型や製造工具の用意が不必要なだけでなく、材料の無駄を最小限に抑えつつ、複雑な形状を持つ部品も一貫して高い精度で製造できるため、製造コストを効果的に削減できます。
金属3Dプリンターのデメリット
次に、主なデメリットを見ていきます。
造形方式の詳しい知識が必要
既に説明したように、3Dプリンティングには複数の造形方式が存在し、それぞれに異なる原理や特徴を持っています。そのため、適切な造形方式の選択や設定には高度で技術的な知識が必要です。
初期費用やランニングコストがかかる
高額な初期投資が伴う点は、金属3Dプリンター導入の大きなデメリットです。プリンター本体だけで数千万以上の費用がかかり、さらにプリンターを稼働するための専用の設備の導入にも数百万円かかることがあります。
大量生産に向かない場合がある
金属3Dプリンティングは、部品をひとつずつ造形する方式のため、大量生産には向いていないケースも多いです。製造速度が伴わないことや、材料や機器の消耗が一定の生産数を超えると、コストが増大する可能性があります。
金属業務用3Dプリンターおすすめメーカー
金属業務用3Dプリンターは、さまざまなメーカーから販売されています。ここでは、特におすすめメーカーと、販売している業務用3Dプリンターの特徴をご紹介します。
3D Systems
3D Systemsは、アメリカに本社を置く、3Dプリンティングおよびデジタル製造ソリューションを提供する企業です。3D Systemが提供する主な金属3Dプリンターとしては、「DMP Factory 500」「DMP Flexモデル」「DMP Monitoring」などがあります。
DMP Factory 500は粉体管理が統合された金属3Dプリントで、シームレスな部品生産、低総所有コストでの製造が特長です。DMP Flexモデルは、一貫した低酸素 (O2)環境での製造が可能なモデルであり、高スループット、高いパフォーマンスおよび再現性、低コストなどが魅力です。
DMP Monitoringは、リアルタイム造形解析ができるモデルで、DMPプロセスをハイレベルでチェック、分析、修正できます。
オークマ
オークマ株式会社は、主に金属加工産業向けに工作機械を提供している企業です。オークマ株式会社が提供する金属3Dプリンターは、超複合加工機(LASER EX シリーズ)として高い人気を誇っています。
LASER EX シリーズは「究極の工程集約マシン」と言われており、切削加工・研削加工だけでなく、金属積層造形、コーティング、焼入れまで、一台で完結して行えるのが最大の特長です。LASER EX シリーズの機械外観のサイズや設置スペースを知りたい方向けに、「3D Machine View」も提供しています。
金属3Dプリンターは、金属材料を層状に積み重ね、エネルギー源を用いて溶融・固化させて立体物を造る技術です。使用可能な金属材料にはステンレス、チタン、アルミニウム、鋼などがあります。この技術のメリットには、自由な造形形状、試作品や小ロットの容易な製造、製造コスト削減がありますが、デメリットとして、高度な知識が必要で初期費用が高いこと、大量生産には向かないことが挙げられます。おすすめメーカーとしては、3D Systemsとオークマがあります。
販売している金属3Dプリンターの特徴は異なりますので、用途にあったプリンターを検討してみてはいかがでしょうか。