造形方式によって異なる業務用3Dプリンターの対応材質と主な材料の特徴
2023/11/28
業務用3Dプリンターで造形物を作るためには、造形物の形状や用途、特徴に合わせた材料選びが重要です。一般的に使用される材料には、ABS樹脂、PLA樹脂、ポリプロピレンライク樹脂、ABSライク樹脂、ナイロン樹脂、および金属などがあります。これらの材料は、それぞれ特性や用途に合わせて選ばれます。
業務用3Dプリンターの主な材料
業務用3Dプリンターで造形物を作るためには、造形物の形状や用途、特徴に合わせた材料選びが重要です。一般的に業務用3Dプリンターで使用される材料の特徴をご紹介します。
ABS樹脂
プラスチックなどにも利用されており、塗装や研磨などの後加工がしやすい素材です。材料であるアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの三つの有機化合物の頭文字をとってABSと呼ばれています。
ある程度の耐衝撃性や耐熱性を兼ね備えているため、電子部品の外装などに適しています。ただし、耐候性は弱く、強度の低下を起こしてしまうため、屋外での長期使用などには不向きです。
PLA樹脂
植物由来で、臭いが少ないのが特徴で、石油由来の素材であるABSに対抗して開発されたエコな素材です。熱に弱いため、低い温度で溶け出します。
造形物内で温度差が発生しづらいため、熱収縮が起きにくく、造形物の反りを抑えることができることから、大きな造形物の使用に適しています。
一方で、耐熱性が低くなってしまう点や、塗装や研磨などの後加工が難しいというデメリットがあります。
PP(ポリプロピレン)ライク樹脂
物性をポリプロピレンに似せて作られたエポキシ系紫外線硬化樹脂です。
耐久性と耐衝撃性があるため、割れにくいという特徴があります。半透明な色をしているため、部品の組付け確認やヒンジなどのバネ系の動きをする部品に適しています。
ABSライク樹脂
ABSに似たエポキシ系紫外線硬化樹脂です。ABSより強度は劣りますが、ある程度の試作検証に耐えられるほどの耐久性は持っています。
長期間の使用目的というよりは、最終決定前の試作品などに適しています。
ナイロン樹脂
ナイロン樹脂は、強度、柔軟性、耐熱性に優れており、サポート材が不要で造形時間が短いのが特徴です。
試作品でも完成品でも使える点がメリットで、実際に、アパレル製品や自動車のパーツなどにも使用されています。ただし、3Dプリンターの素材として使う場合、FDM方式では対応機種が限られていることなどがデメリットです。
金属
金属を素材にできる3Dプリンターも存在しています。
例えば、チタンなどは軽量で強度が高く、耐食性にも優れているため、機械部品の製造や医療関係の道具などに使われています。
他にも、ゴールドやシルバー、ステンレスなどの素材も使うことができます。
造形方式別~業務用3Dプリンター対応材質
3Dプリンターには、さまざまな種類の材料がありますが、実際に使えるかどうかは、造形方式と機種によって異なります。
一般的に対応可能な材料を造形方式別にご紹介します。
熱溶解積層方式(FDM方式)
対応可能な材料は、ABS樹脂、PLA樹脂、PC(ポリカーボネート)などです。
熱溶解積層方式は、加熱して溶かした材料をノズルから押し出し、1層1層積層して造形する方式です。
メジャーな造形方式のひとつで、試作品から最終製品まで利用可能、業務用プリンターだけでなく、家庭用にも広く普及しています。
材料を加熱して積層していくため、造形物内で温度差が生じてしまい、反りが発生することがある点には注意が必要です。
インクジェット方式
対応材料は、ABSライク樹脂、金属素材、ゴムなどです。
素材をノズルから噴射し、積層していく方式です。液体樹脂や液体金属を噴射し、硬化させていくことで、高精細で再現性の高い造形物を作ることができます。
光造形方式(SLA/DLP方式)
対応材料は、ABSライク樹脂、PPライク樹脂などです。光硬化樹脂に紫外線を当てて硬化させ積層していく方式で、層間が馴染みやすいため、積層痕が目立たず、表面が滑らかな造形物を作れる点が特徴です。
ただし、素材となる樹脂は、太陽光による劣化や変形が起きやすいため、材料と造形物共に適切な管理が必要になります。
業務用3Dプリンターの材料選びのポイント
業務用3Dプリンターの材料選びは、目的に応じた造形方式と材料の選定が重要です。
材料選びの主なポイントを詳しくご紹介します。
何をつくるのか
作成する物に応じて適した素材を選びます。例えば、外観を確認するための試作品では、材料にこだわる必要はないため、コスト効率の高いABS樹脂が適しています。
一方で、強度や耐久性が求められる実用製品では、ナイロン樹脂を選ぶなど、造形物の目的に応じて材料を選ぶことが重要です。
造形物の大きさと強度で選ぶ
大きな造形物は、反りやゆがみのリスクが高まるため、耐久性や耐熱性のある素材が求められます。PLA樹脂は、反りが発生しづらいため、大型造形に適しています。
一方、フィギュアやミニチュアのような小さく細かい造形には、精細な仕上がりを実現できるABSライク樹脂などの液体硬化樹脂が適しています。
仕上がりで選ぶ
素材によって造形物の仕上がりが異なります。
例えば、滑らかな仕上がりやデザイン性が重視される場合は、研磨や塗装に適した素材や光造形方式に適した素材を選ぶのがよい選択です。内部構造を確認する目的で、クリアな仕上がりにしたい場合は、半透明の素材を使用するのが適しています。
このように、造形物の目的やサイズ、強度、仕上がりに合わせて、最適な材料を選ぶことが業務用3Dプリンターの材料選びの重要なポイントです。
業務用3Dプリンターでの造形物制作には、造形物の形状、用途、特性に合わせた適切な材料の選択が極めて重要です。一般的に使用される材料には、ABS樹脂、PLA樹脂、ポリプロピレンライク樹脂、ABSライク樹脂、ナイロン樹脂、および金属などがあります。これらの材料は、それぞれ特性や用途に合わせて選ばれます。
材料選びのポイントとして、何を作成するのか、造形物の大きさと強度、仕上がりの要件が挙げられます。例えば、試作品ではコスト効率の高いABS樹脂が適していますが、実用製品には耐久性のあるナイロン樹脂が選ばれます。また、大型造形物には反りが少ないPLA樹脂が役立ちます。仕上がりが重要な場合は、研磨や塗装に適した素材や光造形方式が選択されます。 これらの要点を考慮して、業務用3Dプリンターでの材料選びを行いましょう。