業務用3Dプリンターで使用できるモデル材とは?種類や特徴を解説
2023/12/26
業務用3Dプリンターにおいて、モデル材は造形の要となる素材です。ABSライク樹脂、光硬化性アクリル樹脂、ナイロン樹脂、金属など、異なるモデル材が存在し、それぞれ特徴と適用範囲が異なります。プロジェクトの要件に合わせて最適なモデル材を選択することが重要です。
モデル材とは?業務用3Dプリンターの主な用途
3Dプリンターにおいて、モデル材は造形モデル自体の素材です。このモデル材は、最終的に作成される物体の樹脂部分を構成する重要な要素です。3Dプリンターは、モデル材を層状に積み重ねて立体物を作成するため、その特性や選択が造形の品質や特性に影響を与えます。以下では業務用3Dプリンターの主な用途について解説します。
◇試作モデルの作成
3Dプリンターは、商品化を検討している製品の試作モデルの作成でも用いられます。3Dプリンターで試作モデルを作成するメリットとして挙げられるのは、次の2つです。
コストを削減できる
これまで、試作モデルを作成する際はアルミ材を使用した簡易金型で作成することが多く、材料も必要でその分コストが掛かっていました。一方の3Dプリンターは、自社製作ができ材料分の費用だけで済むため、最小限のコストで抑えられます。
何度も造形でき造形時間を短縮できる
3Dプリンターの最大のメリットともいえるのが、手軽で造形する時間を短縮でき何度も造形できることです。試作の段階で確認しながら造形でき、設計ミスなどがあっても修正も簡単にできます。
従来の試作は図面に落とし込み、組み立てなどの手間や時間が発生してしまうため、その分期間がかかるのがデメリットでした。しかし、3Dプリンターは3Dデータがあれば簡単に製作が可能です。
手軽で簡単に作成できるのは魅力ですが、目的に合ったものを選ばなければなりません。簡易的なシミュレーションなのか量産段階に入る前のシミュレーションなのかで、向いている3Dプリンターのモデルが異なります。試作モデルを作成する際は、その点も明確にして3Dプリンターのモデルを選びましょう。
◇治具・工具の作成
治具・工具の作成に3Dプリンターを活用することで、軽量で頑丈な設計が可能です。これにより、作業者の負担が軽減され、ヒューマンエラーが減少します。複雑な形状やデザインを簡単に実現できます。治具や工具を作業環境や特定のタスクに合わせて最適化でき、作業の安全性と効率性が向上します。
また、遠隔地の製造現場でも、治具や工具のデータを送信し、3Dプリンターを用いて簡便かつ迅速に製作できます。物理的なアイテムを送る手間とコストが削減されます。さらに、3Dプリンティング技術はカスタマイズに適しており、特定の作業環境やタスクに合わせて治具や工具を調整できます。
3Dプリンターを使用した治具や工具の製作は、通常の製造方法と比較して低コストで行えます。特に小ロット生産やカスタムツールの場合にコストメリットがあります。
3Dプリンターを利用することで、アイデアを素早く具現化し、トライ&エラーを通じて現場の改善が実現できます。
◇製品化
業務用3Dプリンターは、試作品やプロトタイプだけでなく、実際の製品を製造するためにも活用されています。3Dプリンティングは、材料の無駄を削減し、小ロット生産やカスタム製品でもコストを削減できます。このため、顧客ごとに製品をカスタマイズすることも可能です。
また、複雑な部品やカスタム製品を3Dプリンターで迅速に作成でき、市場に早く製品を提供できます。さらに、材料の無駄を減らし、省エネルギーな製造が可能で、持続可能な製造方法として注目されています。最後にデジタルデザインから物理的な製品への移行がスムーズで、製造プロセスを統合化できます。
業務用3Dプリンターは、製品開発と競争力向上に貢献し、将来的にはさらなる普及が期待されています。
業務用3Dプリンターの特徴を造形方式別に解説
業務用の3Dプリンターは、製造業をはじめ建築業、医療業界、介護業界などさまざまな業界で活用されていますが、3Dプリンターにもさまざまな種類があり、造形方式や材料などが異なります。
◇熱溶解積層方式
FDM/FFF方式ともいわれていますが、加熱された樹脂や素材を溶かしてノズルから押し出し、一層ずつ積層していくのが特徴です。
熱可塑性樹脂を使用するため、強度と耐熱性に優れており、ABS樹脂やPLA樹脂などにも対応可能で試作品だけでなく製品化にも適しています。
◇光造形方式
SLA/DLP方式と呼ばれることもあり、SLA方式とDLP方式で少々異なっているのが特徴です。
SLA方式は、光硬化樹脂に紫外線レーザーを当てて硬化させて一層ずつ積層して造形していきます。一方のDLP方式では、液体樹脂にプロジェクターを通し紫外線を当てて硬化させる方式です。
ABSライク樹脂・PPライク樹脂といったモデル材に対応可能で、表面が滑らかな製品を造形するのに適しています。ただし、太陽光による劣化・変形が起きやすいため、注意が必要です。
◇インクジェット方式
インクジェット方式は、材料を噴射して一層ずつ積層して造形していきます。フルカラーによる造形や複数の性質の素材を混合し、造形して高精細で再現性が高いものの製作が可能です。ABSライク樹脂・金属・ゴムなどのモデル材に対応しています。
業務用3Dプリンターで使用されるモデル材の種類と特徴
3Dプリンターでよく使用されるモデル材には、さまざまな種類がありますがよく使用している素材はABSライク樹脂・光硬化性アクリル樹脂・ナイロン樹脂・金属です。
それぞれ向いている造形方式や仕上がりが異なるため、モデル材の特徴を知っておくと試作品などの作成や製品化もしやすくなります。
◇ABSライク樹脂
ABSライク樹脂は、光造形方式・インクジェット方式対応の素材で、最終製品の機能・デザインチェックするためのプロトタイプで使用されることが多いです。ABSと名称が似ていますが、強度がABSよりも劣ることと対応している造形方式が異なります。
◇光硬化性アクリル樹脂
光硬化性アクリル樹脂は、ABSライク樹脂同様、光造形方式で使用されるモデル材です。
素早く正確な造形が可能である点は魅力ですが、耐久性や耐衝撃性には優れていないため、長期的に使用する部品などには不向きなため、使用するのは避けた方が良いでしょう。
◇ナイロン樹脂
ナイロン樹脂は、スマホケースや試作品などの作成でよく使用されるモデル材で、粉末焼却方式で造形します。業務用3Dプリンターで使用されるモデル材の中で最も安価でありながら耐久性に優れており、駆動モデルの試作などに最適です。
◇金属
金属は、強度があり精密機器の部品に適しています。主に金属は粉末焼結積層方式で造形しているのが特徴です。これにより、高強度の金属製品を作成することが可能です。ステンレス鋼やチタンなどの金属が使用されます。
選択したモデル材に応じて、3Dプリンターの動作条件や後処理方法が異なります。モデル材の選択はプリントの精度、強度、耐久性、化学的特性などに大きな影響を与えるため、プロジェクトの要求事項に合わせて慎重に選択することが重要です。
3Dプリンターにおいて、モデル材は造形モデルの素材で、最終的な樹脂部分を構成します。業務用3Dプリンターは試作モデルの作成、治具・工具の製作、製品化など幅広い用途に利用されます。試作モデルの作成では、コスト削減と迅速な製作が可能で、設計の修正も容易です。
治具・工具の作成では、軽量で頑丈な設計が実現し、作業の効率と安全性が向上します。製品化においては、小ロット生産やカスタム製品の制作が可能で、持続可能な製造方法として注目されています。 業務用3Dプリンターは熱溶解積層方式、光造形方式、インクジェット方式など様々な造形方式があり、モデル材も異なります。
代表的なモデル材にはABSライク樹脂、光硬化性アクリル樹脂、ナイロン樹脂、金属があり、それぞれ特長が異なります。選択したモデル材によってプリントの精度や強度が変わり、プロジェクトの要求事項に合わせて選択することが重要です。