3Dプリンターについて

多色・他素材対応の業務用3Dプリンターの誕生で広かる可能性

2024/03/27

多色・他素材対応の業務用3Dプリンターが登場し、製造業界に革命が訪れています。従来の制約を超え、最新テクノロジーによって、一台のプリンターで最大16色の造形や複数素材の組み合わせが可能になりました。

さらに、3Dプリンターの進化はデジタル造形への移行を加速させ、効率的で柔軟な製造方法を提供することが期待されています。この革新は、ものづくりのプロセスを変革し、新たな可能性を広げることで、製造業界におけるイノベーションを促進するでしょう。

これまでの一般的な業務用3Dプリンター

これまでの一般的な業務用3Dプリンターには、造形物の色決定や素材選定に関して一定の制約がありました。以下に、従来の業務用3Dプリンターの特徴について説明します。

◇造形物の色は素材の色もしくは染色で決まる

業務用3Dプリンターにおいて、造形物の色は主に2つの方法で決定されます。ひとつは、使用される素材そのものが持つ色をそのまま利用する方法です。例えば、白いプラスチックを使用すると、最終的な造形物の色も白になります。

もうひとつの方法は染色です。染色は、オブジェクトが完成した後に染色することで、特定の色や質感を出すことができます。ただし、使用する素材によっては染色が難しい場合もあるので、注意が必要です。

◇用途に合わせた素材選び

上述の理由から、一般的な業務用3Dプリンターでは染色作業を考慮し、染色が容易な素材を選択することが必要です。染料の浸透性や素材の吸収性など、素材の特性が染色の成功に影響を与えます。

さらに用途によっては、特定の機械的特性（強度、耐久性、精度など）を備えた素材を選択する必要があります。ただし、選択した素材によっては染色が難しかったり、逆に染色が容易でも強度や精度が低下したりする場合があり、現状では多くの課題が存在します。

多色造形は色や範囲が限られていた

FDM式3Dプリンターで多色造形を行う方法はいくつかありますが、ここでは「マルチカラーフィラメントを使用する方法」と「途中でフィラメントを取り替える方法」の2つをご紹介します。

◇マルチカラーフィラメントを使用する

マルチカラーフィラメントは、複数の色が1つのフィラメントに含まれている3Dプリンター用のフィラメントのことです。このフィラメントを使用すると、印刷中に自動的に色が切り替わり、1つのモデルにグラデーションのような色彩を生み出すことができます。

一方で、マルチカラーフィラメントは利用可能な色の選択肢が限られていることがデメリットです。そのため、色の一貫性に問題が生じたり、特定の色を再現することが難しかったりする場合があり、複雑な色の変化や細かなデザインには適していない可能性があります。

◇途中でフィラメントを取り替える

プリンターを一時停止してフィラメントを交換することで、より多様な色使いを実現する方法です。この手法では、異なる色や材料を使用して複雑なデザインや微細な色の変化を実現することが可能です。

ただし、フィラメントの交換は手動で行う必要があり、正確なタイミングや技術が必要です。また、この方法ではZ軸方向（高さ）の色は変更できますが、XY方向で色を変更することは技術的に難しいというデメリットがあります。

技術の進化により多色・他素材対応も可能に！

画像出典先：アルテック

近年、新たな技術革新によって、多色・他素材対応を可能とした業務用3Dプリンターが登場しています。

◇16色の多色造形が可能な業務用3Dプリンター

Bambu Lab社が開発した業務用3Dプリンターは、独自の多色自動素材システム（AMS）を搭載し、一台で最大16色の造形が可能です。このシステムは、複数の素材を一つの造形物に使用できるという特徴を持ちます。低価格で提供されるこのプリンターは、PLAやPETGなどの低温素材から、カーボンやガラスファイバー入りの強化素材、ABSなど幅広い素材を扱うことができます。

さらに、高精度のセンシングシステムが搭載されており、LiDARシステムや各種センサーによって造形過程を監視します。これにより、造形の失敗や問題を自動的に検出し、フィラメントの無駄や時間の浪費を防ぎます。

また、高速印刷スピードも特筆すべき点であり、CoreXY式の構造やカーボンレール、ハイパワー加熱器の採用により、最大移動速度500mm/sと最大流量32mm3/sを実現しています。これにより、迅速かつ多彩な色彩を持つ造形物を効率的に製造することが可能です。

◇他素材・フルカラーを実現した業務用3Dプリンター

Stratasys社が開発した「Connex3」は、最大46色のカラー造形が可能な業務用3Dプリンターです。色の数だけでなく、透明度、色調、柔軟性などを細かくシミュレートし、色彩豊かなオブジェクトを造形できます。

用途に合わせてさまざまなモデル材料を選択できる点も魅力です。カラー材料だけでなく、汎用硬質素材、透明素材、ゴム素材、ポリプロピレン、耐熱材などが利用可能です。これにより、多様な用途やニーズに対応し、高品質なモデルを実現できます。

Connex3で感じる業務用3Dプリンターの新たな可能性

他素材・フルカラーを実現できる業務用3Dプリンター「Connex3」は、さまざまな企業で導入されています。ここでは、「Connex3」の導入によって生じた効果と、今後のものづくりがどのように変わっていくかを解説します。

◇Connex3の精度と色彩表現に感動

カプセルトイ（カプセル自動販売機のフィギュア商品）の製造・販売を行うW社は、2014年2月に「Connex3」を導入しました。以後、小型玩具の造形をConnex3で積極的に実施しています。

同社の担当者によると、「Connex3は46種類のカラーを出せるため、小型フィギュアのような多彩なグラデーションを必要とする商品には最適でした。精度や強度も期待以上で、これまで私が見てきた業務用3Dプリンターの中でも最高クラスです」と評価しています。また、「今後はさらに多くのマテリアルや色の濃度を組み合わせ、より多彩なフィギュアの造形に挑戦したい」と述べています。

◇3Dプリンターの進化で変わるものづくり

高性能な3Dプリンターの登場により、フィギュアをデザインする原型師の仕事も大きく変化してきています。以前は手作業で粘土で原型を作成していましたが、今ではデジタルモデリングソフトを使用してデザインを行い、それを3Dプリンターで出力するようになりました。

ある原型師は、「以前は時間をかけて手作業で表現していたことが、3Dプリンターの簡単な操作で短時間に細部まで表現できるようになった。今後、3Dプリンターの導入によるデジタル造形への移行をもっと加速させるべきだ」と述べています。

3Dプリンターの進化は、ものづくりのプロセス全体を変革し、より効率的で柔軟な製造方法を提供することが期待されています。

従来の業務用3Dプリンターでは、造形物の色決定には素材の色や染色が主な手法であり、染色作業は素材選定に影響を与える課題がありました。多色造形においては、マルチカラーフィラメントや途中でのフィラメント交換が一般的でしたが、色や範囲に限界があり、制約を抱えていました。

しかし、最新の技術革新により、Bambu Lab社の16色造形やStratasys社のフルカラー造形など、多色・他素材対応を実現した業務用3Dプリンターが登場しています。これにより、迅速かつ多彩な色彩を持つ造形物を効率的に製造できるだけでなく、用途に合わせた素材選択も可能となり、製造プロセスの柔軟性と効率性が向上しています。

この革新は、製造業界におけるものづくりプロセスの変革をもたらし、デジタル造形への移行を加速させる可能性があります。