強度に優れた業務用3Dプリンターの素材チタン!医療現場でも活躍
2024/04/23
業務用3Dプリンターが注目を集める素材の一つ、チタン。その優れた強度と耐食性が、航空や自動車産業に革新をもたらすだけでなく、医療現場でも大きな活躍が期待されています。特に医療分野では、チタン合金を用いた人工骨やインプラントが注目され、3Dプリンティング技術を活用した高品質な製品が開発されつつあります。
航空産業や自動車産業での活用が期待される金属3Dプリンター
航空産業や自動車産業では、金属の部品は必要不可欠です。業務用3Dプリンターを用いれば、金属製品も製造することが可能なため、航空産業や自動車産業での活用が期待できます。
◇製品製造も可能な金属3Dプリンター
金属3Dプリンターでは、耐熱性や耐摩耗性など、従来の製造方法では難しい材料を使用することが可能です。これにより、高温環境や厳しい条件下で使用される部品の製造が可能になります。航空産業や自動車産業では、エンジン部品やブレーキ部品などの高性能部品の製造に適しています。
◇金属3Dプリンターの概要
金属3Dプリンターは、金属粉末を使用して物体を造形する先端技術です。金属3Dプリンターは、従来のプラスチックフィラメントとは異なり、金属粉末を原料として使用します。この粉末は、通常、チタン、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属から作られます。
金属粉末を積層し、所定の形状を作るために、通常、レーザーまたは電子ビームが使用されます。これにより、粉末が溶融され、一つの層が形成されます。この過程は、粉末を固定されたプラットフォームの上に配置し、レーザーや電子ビームを使用して粉末の特定の領域を溶かすことで行われます。
従来の製造方法では難しいあるいは不可能だった複雑な形状や内部構造を持つ物体を製造できるため、設計の自由度が非常に高いです。これにより、革新的な製品やデザインの開発が可能になります。
課題は強度?金属3Dプリンターの強度と素材による違い
画像出典先:MFG Hack
金属3Dプリンターの強度に関する疑問や懸念は一般的ですが、その強度は使用される素材に大きく依存します。さまざまな金属素材が使用される中、それぞれの特性や強度の違いが存在します。
◇強度を不安に思う声は多い
金属3Dプリンターの生産性を魅力に感じる一方で、強度不足になるのではないかと不安視する人も少なくありません。以下で、強度不足となる主な原因について解説します。
層間結合の問題
金属3Dプリンターは、レーザーや電子ビームを使用して金属粉末を溶融し、層を積み重ねて物体を造形します。しかし、この積層プロセスによって生じる層間結合の強度が不足する場合があります。特に、積層された層同士の接着性や結合の均一性が不十分な場合、物体の強度が低下する可能性があります。
欠陥や微細な不均一性
金属3Dプリンターで造形される物体には、微細な欠陥や不均一性が生じることがあります。例えば、気泡や結晶粒界の不均一性、層間の隙間などがあります。これらの欠陥や不均一性は、物体の強度を低下させる可能性があります。
後処理の重要性
金属3Dプリントされた部品は、造形後に適切な後処理が必要です。例えば、熱処理や表面仕上げなどが行われることで、層間結合の強化や欠陥の修正が行われます。しかし、後処理が不適切である場合、物体の強度や耐久性が不足する可能性があります。
材料の選択
◇金属3Dプリンターの素材ごとの強度は?
金属3Dプリンターで使用される材料の品質や特性も強度に影響を与えます。一部の金属粉末は、強度や耐久性が不足している場合があります。また、適切な材料が選択されない場合、特定の用途に適した強度を持つ部品を製造することが難しくなります。
チタン合金
軽量でありながら強度と耐久性に優れています。生体材料としても適しており、医療機器や航空宇宙産業で広く使用されています。
強度: 強度が非常に高く、特にチタン-6アルミニウム-4バナジウム(Ti-6Al-4V)合金は一般的で、非常に優れた強度を持ちます。
ステンレス鋼
耐食性に優れ、一般的な金属素材として幅広く用いられています。3Dプリンティングによって複雑な形状や内部構造を持つ部品が製造できます。
強度: 強度はチタン合金よりもやや劣りますが、特に強度を重視しつつ耐食性を求める場合に適しています。
アルミニウム合金
軽量で加工しやすく、熱伝導性が高いため、熱処理や熱交換部品などの用途に適しています。
強度: アルミニウム合金は強度が比較的低いですが、耐食性や軽量性を求める場合には優れた選択肢となります。
ニッケル合金
特徴: 高温に耐える性能があり、熱処理や高温環境での部品に適しています。航空宇宙やエネルギー産業などで使用されます。
強度: 高温強度が優れており、耐熱性や耐蝕性に優れています。
強度が強いチタンの特徴や種類
前述した通り、チタン素材は強度が高いことが特徴の素材です。ここではチタンについての詳細な解説と種類ごとの違いについてご紹介します。
◇チタンとは?
チタンは化学元素の一つであり、化学記号はTiで表されます。原子番号は22です。チタンは非常に軽量でありながら強度が高く、耐食性にも優れています。そのため、航空宇宙、医療機器、自動車部品など、さまざまな産業で広く使用されています。
物理的性質
チタンは非常に軽量であり、密度は約4.5 g/cm³です。しかし、その強度は鋼鉄に匹敵するため、強度重量比が非常に高いという特徴があります。高い融点を持ち、約1668°Cで融解します。この特性から、高温環境での使用にも適しています。また、チタンは耐食性に優れており、酸化物や塩素イオンに対して非常に耐久性があります。そのため、海水中や化学プラントなどの腐食の影響を受けやすい環境でも使用されます。
◇チタンの種類ごとの違い
チタンの種類ごとの違いは以下の通りです。
純チタン
純チタンは非常に高い強度、耐食性、耐熱性を持ち、生体親和性も高いため、医療機器や人工関節などの生体材料として広く用いられています。生体材料、航空機、宇宙船の構造部品、化学プラントなど、高い耐食性と耐熱性が求められる場面で利用されます。
チタン合金
チタン合金は、純チタンに他の元素(例: アルミニウム、バナジウム、鉄)を添加して特性を改善したものです。特定の要件に対応するために様々な合金化が行われており、強度や耐熱性を向上させることができます。航空宇宙、自動車、医療機器、スポーツ用品など、高い強度と耐食性が必要な製品の製造に広く使用されます。
チタン合金 Ti-6Al-4V(64チタン)
64チタンはチタン合金の一種であり、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)の元素を主成分としています。非常に高い強度と耐食性を持ち、軽量でありながらも耐久性に優れています。航空宇宙産業での構造部品やエンジン部品、医療機器、自動車部品など、高い強度と軽量性が求められる用途で広く利用されています。
業務用3Dプリンターだからこそ実現するチタンの優れた造形物
業務用3Dプリンターを用いることで、チタン素材の優れた造形物を実現する可能性が広がっています。チタンはその強度や軽量性から、医療分野を含むさまざまな領域で活用が期待されています。ここでは特に、医療におけるチタンの活用方法に焦点を当てて解説します。
◇人口骨としての活用が可能なチタン
チタン合金は、3Dプリンティング技術を活用することで、人工骨としての優れた特性を発揮します。この素材は無毒で無害、高温耐性、高耐食性、高強度、低密度などの利点があり、人体に優しいとして広く知られています。医療用金属産業では重要な位置を占め、人口骨としての利用も期待されています。
チタン合金を用いた人工骨は、3D技術を駆使して直接製造することが可能です。施術後、本物の骨に非常に近い特性を持ち、生体適合性が高いため体内での適合が良好です。また、3Dプリンティングによる製造プロセスでは、材料の効率的な利用や製品の急速な凝固、補助装置の不要化など、多くの利点があります。
◇チタンインプラントによる手術の事例
ナカシマメディカルが開発したチタンインプラントは、3Dプリンターで製造される人工股関節部品として注目されています。このインプラントは、人体の骨盤に埋め込む「カップ」と呼ばれる部品で、従来の製造方法よりも複雑な構造を可能にします。
3Dプリンターによる製造では、チタン合金の粉末に電子ビームを照射して固化させる方法が採用されています。このプロセスにより、精密な表面処理が施され、骨が成長するための微細な凹凸が形成されます。これにより、従来の加工方法では難しかった精密な加工が可能となり、体内でのリスクも軽減されます。
金属3Dプリンターは航空産業や自動車産業に革新をもたらす可能性があります。この技術は耐熱性や耐摩耗性などの高度な金属部品の製造を実現し、航空機のエンジン部品や自動車のブレーキ部品などの高性能部品に適しています。
しかし、金属3Dプリンターの強度に関する懸念もあります。層間結合の問題や欠陥、後処理の重要性などが挙げられます。また、使用される金属素材によって強度や特性が異なります。特にチタン合金は航空宇宙や医療機器などで幅広く使用され、優れた強度と耐久性を持ちます。
3Dプリンターによるチタンの活用は、医療分野においても人口骨や人工関節などの製造を可能にし、斬新な治療法の発展に貢献しています。