3Dプリンター用カーボンファイバーは耐熱性と強度で金属の代替としても期待
2024/05/31
プリンター用カーボンファイバーは、耐熱性と高い強度を持つため、金属の代替素材としても期待されています。鉄の約1/4の比重で、比強度は鉄の10倍、比弾性率は7倍です。さらに耐熱性、導電性、耐摩耗性、耐酸性にも優れています。これらの特性により、オートバイのパーツやレーシングカーの部品など、厳しい環境下での使用に耐えうる素材として注目されています。
カーボンファイバーの特徴とは?
現在3Dプリンター向けのフィラメント素材の中で、カーボンファイバーを配合したものが人気です。カーボンファイバーは高い強度と剛性を持ち、さまざまな製品に使用されています。この章ではカーボンファイバーにはどんな特徴があるのかみていきましょう。
◇優れた機械的特性がある
カーボンファイバーフィラメントの最大の利点は、その優れた機械的特性です。高い強度と剛性を持ち、耐衝撃性も優れています。カーボンファイバーは、鉄の約1/4の比重を持ち、比強度は鉄の10倍、比弾性率は鉄の7倍です。
さらに、導電性、耐摩耗性、耐酸性が高いという特徴もあります。また、耐熱性にも優れており、軽量かつ丈夫で硬い特性は、金属パーツの代替としても広く活用されています。
◇表面仕上げが綺麗
カーボンファイバーフィラメントで作られたものは、他のフィラメント材料と比べて積層跡が目立ちにくく、全体的に美しい表面仕上げになります。黒系のカラーが多く、マットな質感の再現が可能です。
◇寸法の安定性
カーボンファイバーフィラメントは、吸湿性が低いため、寸法の安定性が比較的高いことで知られています。これは、炭素繊維がフィラメントに配合されており、これにより強度が向上し、反りや収縮が抑制されるからです。
3Dプリンターは摩耗しやすい?
画像出典先:まざっきblog
さまざまな場面でさまざまな用途に活躍をみせる3Dプリンターですが、課題のひとつとして摩耗しやすいことが挙げられます。特に消耗品と言われるノズルに関連する問題は意外と多いものです。例えば、適切なノズル形状の選択がわからない、ノズル先端に樹脂の塊ができる、フィラメントが詰まるなどが挙げられます。その中でも特に頻繁なのが、ノズルの摩耗による問題です。
◇ノズルは使い続けると変化する
ノズルには大きく分けて2つの変化が起こります。それは炭化と摩耗です。使用済みのノズルでは内部が黒く変色し、摩耗によるダレや寸法の変化が見られます。炭化と摩耗のどちらが優先的に起こるかは、フィラメントの材質によって異なります。
一般的なフィラメントを使用する場合、炭化が優先的に発生しやすくなりますが、炭素繊維などの硬いフィラーが添加されている場合は摩耗が優先的に起こりやすくなります。
◇ノズルの摩耗で懸念されるリスク
ノズルの摩耗が起こると懸念されるリスクは2つです。まずベッドに対する適切な定着が難しくなることがノズルの摩耗による最も大きなリスクとして考えられます。この悪化は、ノズルとスライサの設定が適合しなくなることが原因です。
ベッドへの定着が悪くなると、印刷中にモデルが動いてしまい、失敗が生じる可能性が高まります。特にFDM方式の3Dプリンターでは、ベッドへの定着の問題が頻繁に発生するため、ノズルの摩耗状況を定期的に確認することが重要です。
印刷の品質低下がノズルの摩耗によるもうひとつのリスクとして挙げられます。品質の低下も、ノズルとスライサの適合不良が原因です。ベッドへの定着が悪くなるだけでなく、印刷品質も低下するため、完成品の精度が低下します。ノズルが摩耗すると、印刷の品質が低下し、作品の完成度が著しく低下する可能性があるため、フィラメントに応じてノズルを選択することが重要です。
業務用3Dプリンターでカーボンファイバーを使用するには?
業務用3Dプリンターは摩耗しやすいことや、ノズルを使い続けて摩耗することで起こり得るリスクがわかりました。特徴やリスクを理解した上で、どのような対策を講ずることができるのか、考えることが重要です。
また、3Dプリンターでカーボンファイバーを使用する場合に適したプリンターを使用することと、ノズルを交換する必要があります。
◇適したプリンターを使用する
カーボンファイバーフィラメントを3Dプリントするためには、特別な条件が必要です。カーボンファイバーは非常に硬くて耐摩耗性が高いので、一般的なデスクトッププリンターではそのままでは対応できません。
まず、カーボンファイバーフィラメントを使うには、プリンターに硬化鋼製のノズルが必要です。通常の真鍮製ノズルではカーボンファイバーによってすぐに摩耗してしまうため、硬化鋼製のノズルに交換する必要があります。
また、プリンターのフレームが密閉されていることも重要です。カーボンファイバーはフィラメントを供給するチューブを摩耗させる可能性があるため、露出したチューブを保護する密閉フレームが必要です。
さらに、フィラメントの供給部分、特に押出機のギアも強化されている必要があります。カーボンファイバーは硬いため、通常のギアではグリップが不足し、滑りやすくなってしまいます。耐摩耗性の金属で作られた強化ギアが推奨されます。
最後に、プリンターには加熱ベッドが必要です。カーボンファイバーのフィラメントは冷却時に反りやすいため、100°C以上に加熱できるベッドが理想的です。これにより、フィラメントがしっかりとベッドに接着し、第一層のトラクションが向上します。
これらの条件を満たしているプリンターを使用することで、カーボンファイバーフィラメントを安全かつ効果的に印刷することができます。
カーボンファイバーを使用している事例を紹介
どのような場面で実際にカーボンファイバーを使った3Dプリンターの使用例が考えられるのでしょうか。ここではカーボンファイバーを実際に使用している事例をご紹介します。
◇金属の代替として使われている
カーボンファイバーは、軽量かつ強度の高い特性を持つため、金属の代替素材としてさまざまな分野で活用されています。具体的な例として、オートバイのパーツに使われているケースがあります。従来、金属で製造されていたオートバイのブレーキレバーやキャリパーカバー、チェーンガード、エンジンガード、スタンド、フットペグなどの部品が、ナイロンとチョップドカーボンファイバーを組み合わせた素材であるPA12CFに置き換えられています。
PA12CFは、ナイロン(PA12)に短いカーボンファイバーを混ぜた素材で、軽量でありながら高い強度を持つため、金属の代替として非常に優れています。
◇レーシングカーの部品として使われている
2013年、ギャリー・ロジャース・モータースポーツのチームマネージャーであるステファン・ミラード氏は、新しい製造手法を導入するために工場に3Dプリンターを設置しました。レーシングカーは耐久性が非常に重要なため、数か月後には炭素繊維対応の3Dプリンターを予約注文しました。
この3Dプリンターを使用して、レーシングカーの部品の一部としてカーボンファイバーを使った造形品が採用されました。カーボンファイバーは非常に軽量で強度が高く、レーシングカーにとって理想的な素材です。この素材を使用することで、部品の耐久性が向上し、車全体のパフォーマンスも向上しました。結果として、チームはより高性能なレーシングカーを作ることができました。
カーボンファイバーの特徴として、強度と剛性が非常に高く、軽量である点が挙げられます。比重は鉄の約1/4でありながら、比強度は鉄の10倍、比弾性率は7倍という優れた機械的特性を持ちます。
さらに、導電性、耐摩耗性、耐酸性、耐熱性にも優れ、金属の代替素材として広く利用されています。例えば、オートバイのパーツやレーシングカーの部品など、耐久性と軽量化が求められる場面で活用されています。 また、3Dプリンターで使用されるカーボンファイバーフィラメントは、他のフィラメントよりも表面仕上げが美しく、寸法の安定性が高いです。
しかし、硬さゆえにノズルの摩耗が問題となるため、適したプリンターや硬化鋼製のノズルの使用が推奨されます。適切な設備を使うことで、カーボンファイバーの特性を最大限に活かし、高品質な製品を製造することが可能です。