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メタマテリアルとは?業務用3Dプリンターで期待される技術と可能性

2024/05/30

メタマテリアルは、自然界には存在しない特殊な素材であり、人工的に作り出されます。その特性を活かし、光や音、電磁波などの振る舞いを制御することが可能です。業務用3Dプリンターは、このメタマテリアルを活用して、複雑な構造や高性能な製品を効率的に生産することが期待されています。

メタマテリアルとは?

メタマテリアルをご存知でしょうか?初めてその名称を聞いたという方もいれば、名称くらいは知っているという方もいらっしゃるでしょう。メタマテリアルは、今後の製造業に大きな変化をもたらす可能性のある物質です。ここではまずメタマテリアルの概要について解説します。

◇自然界には無い素材を人工的に作り出した素材

メタマテリアルとは、超越を意味する「メタ(meta)」と材料を意味する「マテリアル(material)」を組み合わせた言葉で、簡単にいうと自然界には無い人工的に作り出した素材のことです。

メタマテリアルは、自然界の物質では起こらない光との相互作用をする人工材料で、物体内にメタ原子(メタアトム)と呼ばれる微細な構造体が大量に配置されています。そしてこのメタ原子の形状やサイズ、配置を適切に設計することで光や音、電磁波などに自然界には存在しない振る舞いをさせることを可能にしたのです。

例えばそのひとつが自然界には存在しない「負の屈折率」を備えたメタマテリアルです。このメタマテリアルを使えば透明マントを再現することも夢ではありません。メタマテリアルには今後技術の進化と革新に大きな期待が寄せられています。

◇メタマテリアルで再現される可能性のあるもの

上述したように負の屈折率を備えたメタマテリアルで再現される可能性があるもののひとつが透明マントです。自然界に存在する物質は入射とは反対の方向に屈折光が進む正の屈折率を備えています。

これに対し負の屈折率を備えたメタマテリアルは、屈折光をくの字型に屈折させることができ、この性質を利用して光の透過や反射を制御すれば透明マントの再現も可能です。

負の屈折率の応用で再現される可能性があるものとしては、完全レンズも挙げられます。完全レンズは、負の屈折率 n = −1 を持つメタマテリアルで構成された平板型のレンズで、理論上は今の限界よりもはるかに小さなものを見ることも可能です。

メタマテリアルは重量と強度の両立が難しい?

画像出典先:ShareLab NEWS

通常、素材の強度を高めるときには、その素材の密度が増加し、結果として重量も増加します。しかし、メタマテリアルでは、軽量性と強度を両立させることが求められるため、これは設計上の大きな難題となっています。

◇構造強度上成功しにくい

メタマテリアルは、軽量かつ強度の強い特性を持つことが期待されますが、その設計や製造にはいくつかの課題があります。特に、荷重負荷条件下での中空支柱結節部における応力集中が問題となります。

通常、メタマテリアルの構造は複雑であり、均質に応力が分散されることが理想ですが、実際には中空支柱の一部のみが荷重を支え、その他の部分は構造上の役割を果たしません。このため、応力が中空支柱結節部に集中し、構造強度が不足する可能性があります。

その結果、メタマテリアルの設計や製造において、高い強度と軽量化を両立させることが困難となっています。

◇重量と強度の問題がクリアすればどうなる?

仮にこの重量と強度の問題がクリアとなり、高強度と軽量化の両立が実現すれば、その両方を必要とする航空機やロケットなどの部品の材料として有望です。また、メタマテリアルは医療用の骨インプラントの材料としても期待されており、複雑で部分的に空洞のある形状は、身体と融合するにつれ、最終的には再生した骨細胞で満たされる可能性があるといわれています。

業務用3Dプリンターでメタマテリアルの開発に成功

高強度と軽量化の両立が難しいとされてきたメタマテリアルですが、つい最近、オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT大学)の研究チームが、これまでになく強固な性質を有するメタマテリアルの開発に成功しました。

◇3Dプリンターでチタンメタマテリアルの開発に成功

研究チームは、3Dプリンティング技術を使用して、新しいメタマテリアルであるTP-HSLを開発しました。このTP-HSLは、薄板を格子状に組んだ構造TPLと中空支柱格子構造HSLを統合した二重格子構造体です。さらに、高出力レーザービームを用いて金属粉末層を溶融するレーザー粉末床溶融結合法を採用しました。この結果、荷重負荷の際の応力を均質に分散し、応力集中箇所の亀裂発生を回避することに成功しました。

◇メタマテリアルの課題をクリアした

研究チームは、従来のメタマテリアルの課題であった応力の不均質な分散を克服し、構造効率を向上させるために新たな設計と製造手法を開発しました。TP-HSLの開発により、メタマテリアルの構造上の課題をクリアし、荷重負荷時の応力を均一に分散することが可能となりました。

また、この新しいメタマテリアルは、鋳造マグネシウム合金「WE54」よりも50%高い強度を示し、さまざまな用途に適した有望な材料となりました。

クラボウと東京大学がメタマテリアルを共同研究

上記では、オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学の研究チームによって開発されたメタマテリアルの事例をご紹介しました。ここ日本でもクラボウ(倉敷紡績株式会社)と東京大学コンクリート研究室がメタマテリアルを共同研究しています。

◇知見を蓄積している

東京大学コンクリート研究室は、メタマテリアルに関する数値解析によるシミュレーションを得意とし、クラボウはメタマテリアル構造を持つ3Dモデルの造形を行っています。それぞれの役割として、東京大学はメタマテリアルに関する数値解析によって、優れた特性を発現する構造や材料の組み合わせを提案しています。

クラボウはメタマテリアル構造を持つ3Dモデルを造形し、併せて最適なセメント材料の組成開発も進めていく。現在はその知見を蓄積している段階です。

◇3Dプリンターとメタマテリアルの今後

3Dプリンターを使用する際には、従来の設計手法だけでなく、トポロジー最適化や軽量化と強度のバランスを追求する最適化技術が活用されています。これにより、メタマテリアルが持つ複雑な構造を最大限に活かし、より効率的で高性能な製品を生み出すことが可能になっています。

また、メタマテリアルは単なる材料の性質にとどまらず、その特性を超えた性能の付与が可能です。これは、例えば耐熱性や耐久性など、通常の材料では実現が難しい性能を与えることができることを意味します。そのため、将来的にはさらなる革新的な製品や技術の開発において、メタマテリアルは重要な役割を果たすことが期待されています。


メタマテリアルは、人工的に作り出された素材であり、自然界には存在しない特性を持ちます。微細な構造体を配置することで光や音、電磁波などに特殊な振る舞いをさせることが可能で、その中でも負の屈折率を持つメタマテリアルは、透明マントや完全レンズのような技術の実現を可能にします。

しかし、メタマテリアルの設計や製造には課題があります。軽量性と強度の両立が難しく、特に荷重負荷条件下での中空支柱結節部における応力集中が問題となります。最近では、3Dプリンティング技術を用いて、新しいメタマテリアルが開発され、これまでにない強固な性質を有することが示されました。

また、日本でもクラボウと東京大学が共同研究を進め、メタマテリアルの応用範囲を広げています。将来的には、メタマテリアルが革新的な製品や技術の開発において重要な役割を果たすことが期待されています。

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