業務用3Dプリンターの失敗例!原因や適切なメンテナンスを紹介
2024/02/25
業務用3Dプリンターの導入では、造形の失敗を防ぐためにいくつかのポイントがあります。光造形プリンターでは、プラットフォームへの積層不良がよく見られ、原因はレーザーの故障や汚れです。金属造形ではサポート構造が重要で、積層の粗さは部品の汚れやプリント方向に起因します。定期的なメンテナンスとクリーニングが必要です。
業務用3Dプリンターでよくある失敗例
光造形3Dプリンターでの造形の失敗は、プラットフォームに何も積み重ならない現象が一般的です。金属造形では、一部が溶けたり崩壊したりすることもありますが、その際にはサポート構造が必要です。また、積層が粗くなる場合は、内部に空気が入り込んで不均一になることが考えられます。
◇プラットフォームに印刷物が堆積しない
光造形3Dプリンターにおける代表的な造形の失敗は、造形が終了したにもかかわらずプラットフォームに何も積層されていない現象です。この問題の原因は、主にレーザー光が適切に当たっていないことが考えられます。
レーザー光が当たらない理由は、レーザーが故障して正常に機能していない、 レーザー部分の光学窓が汚れている、レーザーを通すレジンタンクに汚れや余分な残留物が付着している、露光時間が不十分、プラットフォームの位置が正確でないことがあります。
これらの原因が組み合わさることで、光造形3Dプリンターにおける造形の失敗が起きるため、プリンターのメンテナンスや調整を適切に行う必要があります。
◇造形物の一部が崩壊してしまう
特にSelective Laser Melting(SLM)などの金属造形では、造形中に一部が溶け落ちたり、設計した形状が崩壊することがあります。
形状の維持や材料特性を最大限に引き出すには、製品とベースプレートの間にサポート構造を導入することが一般的です。
◇積層が粗くなってずれる
光造形3Dプリンターに特有の症状として、カップ形状の物をプリントする際に積層が粗くなったり、穴が開いたりする現象があります。
具体的には、カップのような形状で口がつく場合、内部に空気が入り込むことがあり、この空気が原因で造形物が空気圧によって歪み、積層が不均一になったり、薄肉の場合には穴が開いたりします。
3Dプリンターの失敗要因は故障とは限らない
3Dプリンターの失敗は故障だけでなく、部品の汚れやプリント方向も要因です。光学窓のクリーニングやレジンタンクの清掃が必要です。ラフトやサポート材の調整、レジンの有効期限も確認しましょう。
◇故障による不具合が起きているとは限らない
3Dプリンターを使用して上手くプリントできない時、その失敗の原因は故障とは限りません。3Dプリンターは精密機械であるため、造形物が変形したり、2層目以降がずれたりと、些細なことで不具合が出てしまいます。
3Dプリンターの操作には多くのポイントがあり、それらがうまくできずに失敗することもよくあります。失敗の原因を理解し、対策を講じながら慎重に操作するようにしましょう。
◇部品の汚れやプリント方向が原因の場合も
部品の汚れは失敗の原因のひとつです。
汚れがあれば、アルコール類(IPAなど)と傷をつけない布を使用して光学窓をクリーニングします。
次に、レジンタンクやトレイに汚れや残留物がないか確認し、必要に応じて清掃し、タンク内のレジンはペーパーフィルターなどを使用してろ過し、汚れを取り除いた後、タンクの内部を確認しましょう。
また、レーザーによる摩耗が見られる場合は、タンクの交換が必要です。
その他にも、プラットフォームがレジンと水平に正確に位置しているかを確認し、もし機種が調整可能であれば、水平に調整するようにしましょう。
◇サポート材や部品のチェックもおすすめ
ラフトができている場合、レーザーに問題はなく、サポート材が不足している可能性があります。サポート材の本数を増やすか、太さを太くすることで、造形物が正しく積層されるように調整します。
造形物が表面から剥がれる場合、その原因は複数あり、それらが組み合わさる可能性があります。光造形3Dプリンターのレジンは通常長期間使用可能ですが、有効期限が切れたレジンを使用している場合、この症状が発生する可能性があります。
適切なメンテナンスで失敗を予防しよう
3Dプリンターの適切な操作やメンテナンスが重要です。ノズルとプラットフォームの距離調節が正確でないと、造形に問題が発生します。レジントレイの定期的な清掃が必要です。シャフトとフィラメントの取り扱いにも注意が必要です。
◇ノズルとプラットフォームの距離調節
熱溶解積層方式の3Dプリンターでは、樹脂素材を射出するノズルとプラットフォームの距離が正確でないと、正しい造形ができません。
校正距離が近い場合はフィラメントが平らな線になり、印刷不良やノズル詰まりを引き起こし、逆に、校正距離が遠い場合、フィラメントが波線状になり、印刷不良が生じやすくなるため正しい距離調整が重要です。
ノズルのメンテナンスは熱溶解積層方式であれば、ヘッドに挿入されているガイドチューブを外し、ノズルを約250℃まで加熱します。その後、細い針金や専用のピンツールを使用して、樹脂の吸入口に繰り返し挿入し、内部に残ったフィラメントを押し出します。
◇レジントレイの清掃
光造形方式の3Dプリンターに搭載されたレジントレイは、内部にゴミや硬化した材料が残っている場合、または同じトレイに異なる材料を使用する際には、定期的な清掃が必要です。
なお、レジンは素手で触ると危険なので、ゴム手袋の着用を忘れないようにしましょう。3Dプリンター本体からレジントレイを取り外し、無水エタノールとブラシを使用して、トレイ内部を洗浄します。
洗浄した溶液を廃棄物容器に移し、これを何度か繰り返し、その後きれいなペーパータオルにエタノールを軽く付け、トレイ全体を拭き取りましょう。
この方法は一例で、メーカーによって清掃方法が異なるため、それぞれの3Dプリンターのマニュアルに従いましょう。
◇シャフトとフィラメントの取扱い
シャフトの動作時に、金属の擦れるような音がする場合や、動きがぎこちない場合は、グリス切れになっている可能性があります。その場合はシャフトの清掃をしてから、機器に付属しているグリスや、市販のホワイトグリス・万能グリスを用いて、各軸に塗布します。
湿気に弱いフィラメントは開封後、湿気やホコリの影響を受けやすいため密閉容器での保管が必要で、特にPLAやABS樹脂は湿気を吸いやすいため、乾燥剤入りの容器で管理しましょう。
また、同じメーカーのフィラメントを使用することが推奨され、他のブランド使用時はメーカーの保証対象外になる可能性があります。
業務用3Dプリンターを導入する際、失敗を防ぐための重要なポイントがいくつかあります。
まず、光造形3Dプリンターにおいては、造形物が終了したにもかかわらずプラットフォームに何も積層されていない現象がよく見られます。これは主にレーザー光が適切に当たっていないことが原因であり、レーザーの故障や光学窓の汚れ、レジンタンク内の汚れなどが考えられます。
特に金属造形では、造形中に一部が溶け落ちたり崩壊したりすることもありますが、サポート構造の導入によってこれに対処できます。
さらに、積層が粗くなる場合は、内部に空気が入り込んで不均一になることが考えられます。これらの失敗はすべて故障だけでなく、部品の汚れやプリント方向も原因となり得ます。そのため、定期的なメンテナンスやクリーニングが重要です。
さらに、ノズルとプラットフォームの距離調節やレジントレイの清掃、シャフトとフィラメントの取扱いにも注意が必要です。適切なメンテナンスと操作を行い、失敗を防ぐための努力が必要です。